2010年05月29日

『20 売るモノは過去の遺物、今売るのは関係性』

 こんにちは、猫耳DMことVOCALOIDな界隈では切身魚の人です。
 Andrew Dubber氏の無料e-booksで配布されている著書、『オンライン音楽について知っておきたい20のこと』(原題"The 20 Things You Must Know About Music Online"
)は大変知的に刺激を受ける良い論文です。
 20個ほどの、優先順位はないのですが、いずれも重要な『オンラインでの音楽ビジネスについて、知っておけ!』なお話が収められています。
 私が今日読んでみたのは『20 売るモノは過去の遺物、今売るのは関係性(Forget product - sell relationship)』です。本当に読みながら「うんうん」と首肯することしきりでした。
 実用新書のように論理的な日本語訳はheatwaveさんのブログでご覧いただけます。より理解を深めたい方はぜひご覧下さい。
http://peer2peer.blog79.fc2.com/blog-entry-1427.html
http://peer2peer.blog79.fc2.com/blog-entry-1624.html
 ここでは私の意訳や注釈を交えた引用つきで、その内容を少しご紹介いたしますね。以下の()内は私の注釈です。

 ビジネスとしての音楽は、ビジネス史上何度も重要な局面を経てきました。それらすべての局面についていえるのは、局面ごとに全く異なる金銭獲得モデルを有していた、という事です。さぁ、今度は最新の局面に飛び込んでいきましょう。

 今でも楽譜の採譜者(切身魚注:大昔には、紙の楽譜というアイテムがありました。紙の上に、聴き取った音符を書き付ける専門職がいたのです)や出版社(切身魚注:大昔には、紙の楽譜というアイテムがあり、これを出版して、化石燃料を用いて物理的に輸送することで音楽データをやり取りしていたのです)は存在していますが、現在の音楽ビジネスにおいては、かつてのような優勢な地位を占めているわけでありません。
 また同様に、ミュージックホールでの演奏の仕事もかつての地位を失っています。(切身魚注:これは特に、人件費や輸送費は全国均一でお高い割に、視聴者がそんなに沢山居るわけではない、日本の地方都市で顕著な傾向です)

 これまでのビジネス史で、人々は『音楽』コンテンツからどのようにしてお金を儲けてきたのか、その主だった方法について振り返ってみることにしましょう。
 いずれも未だ何かしらの形で残ってはいますが、それぞれもう盛りを過ぎています。
 新たなテクノロジーが発展するごとに、それぞれの『儲け方、ビジネスモデル』(切身魚注:原語ではPlayer。ビジネスをゲームに例えた表現です)の得られる金銭は、新たな『儲け方』の登場により大きく変化してきました。
 新たなテクノロジーが登場する度に、産業で支配的な力を得たプレイヤーは大きな波乱を引き起こすことになります。毎度のことなのです。
 
パトロン、金銭的後援者

 バッハがいた時代、というと、まるで恐竜が存在した時代かのごとく大昔に思えるかもしれません。しかし実際には、ほんの数世代前のことです。
 この時代に最も尊ばれた音楽の天才たちは、金持ちの後援者(パトロン)たちの道楽と入れ込み具合に生活を支えられていました。一般に、パトロンは王族や貴族(切身魚注:当然、貴族並みの資産を有した大寺院や教皇庁も含まれます)たちであり、音楽家にとってパトロンを得ることは非常に困難なことでした。
 しかし、王族や貴族にとっては、『文化の保護者』として、神を―そしてパトロンたる自分たちを―賛美するアーティストと、アーティストの音楽を選び抜き、奨励することは、正しく、意義ある行為だったのです。
 
ライブ・パフォーマンス

 音楽演奏が大衆向けの商業的エンターテイメントとなったとき、当然ながら芸術のパトロンたちは驚愕したことでしょう。
 価値ある創作を育んだ文化的土壌を支え、奨励してきた自分たちの業績を否定されたわけですから。しかし、音楽家やその新たな仕事仲間たちは、『少数の人々』よりも『多数の人々』のポケットからお金を集めた方がもっとうまくいくことに気づきました。
 このように突如として、プロフェッショナルへの道が大きく開かれることになりました。
 
印刷出版

 楽譜の誕生は、当時の音楽産業の死を引き起こしました。
 自宅のピアノで音楽を演奏できるような時代に、どうしてわざわざコンサートに行くでしょうか?ポピュラーソングの大量生産は、視聴者の音楽との関わり方、消費の仕方を変えました。
 コンサートホールが消えてなくなることはありませんでした。しかし、楽譜出版は確実にコンサートホール事業に深い傷を負わせました。
 
録音物

 コンサートホールで名をあげた有名なアーティストたちは、録音技術の誕生により、新たな収益を得るようになりました。
 現在では、家の中でステージやスクリーン上のスターの音楽を楽しむことができますし、スターが実際の演奏しているのを聞くこともできます。まるで魔法のようなことですね。
 しかし残念なことに、当時楽譜出版によって金銭を得ていた音楽産業全体にとっては、再び「音楽産業の死」が引き起こされたのです。
 
放送事業

 ラジオの誕生によって、音楽ビジネスは新たな脅威に直面しました。レコードを買うことなく自宅で音楽を聞くことができるようになったなら、いったいどうして人々は音楽にお金をかけてくれるでしょうか?
 最近でも見られる海賊版出版行為の排斥、訴訟、賠償請求といったものは、ここから発生してきました。
 もちろん、現在でもラジオは音楽セールスを最も強力に推進してくれる存在であり続けています。同時に、コンサートホール以外の『演奏権収益』を生み出す存在でもあります。
 
多メディア展開事業

 あなたの音楽をラジオで掛けてもらうのも1つの手ですが、映画、テレビ番組、コマーシャル、ビデオゲームに使ってもらうという別のルートもあります。
 突如として、音楽からお金を儲けるための最速かつ最良の方法は、「単に音楽が聞かれること」から、「音楽をたくさんの人々が触れるものに結びつけること」になりました。
 興味深いことに、現金を出すのはもはや視聴者ではなくなったということです。(切身魚注:企業になった、という意味で用いられていると思われます。資生堂の化粧品CMやドラマ主題歌といった形で、莫大なお金が動いた歴史を思い起こしてください。そして、アニメ主題歌にさえこの手法が乱暴に用いられ、一部では『コンテンツの内容とかけはなれすぎた音楽』が多用された結果、アニメファンによる嫌悪感を作り出してしまったこともあるのです。)
 
そして、新たなテクノロジーがここに…

 音楽にとって新たなテクノロジー環境が登場するたびに、すべてがシフトします。
 それまで支配的だったものは後退し、ひとたび失われたシェアは別ので埋め合わされます。
 かつての音楽産業はラジオ局の閉鎖を要求しました。『無料で音楽を放送する』のを防ごうと、懸命の努力を続けていたのです。そのとき、彼らが自らのドル箱を絞め殺そうとしているだなんて、一体誰が気づいていたでしょうか?

 これは古典的なマクルーハンの法則です。(切身魚注:"We shape our tools and thereafter our tools shape us"、われわれは自分たちの使う道具を形作った。しかるにその後、われわれの作った道具が、われわれの新たな在りようを形作る……という、メディア論の古典のこと。http://www.horton.ednet.ns.ca/staff/scottbennett/media/ )

 しかし、こうした金銭獲得形態の変化は、常に問題をはらんできました。1942年の録音の禁止、レコード時代のイギリスでラジオに課せられた音楽の放送制限(ニードルタイム)、1980年代の「家庭での録音は音楽を殺す(Home Taping is Killing Music)」キャンペーン、近年のメジャーレーベルによる消費者を相手取った訴訟…、新たなテクノロジーの登場は、いずれの時代においても類似した状況を引き起こしてきました。
 けれど結局のところ、問題はうまく収まるのです。

 音楽ビジネスにとって、そして特にあなたにとって最も重要なのは、このゲームの勝者は『新たな環境を理解した人々』であり、『視聴者とアーティストをつなぐ方法を見いだした人々』だということです。実にシンプルなことです。
 
関係性を売る

 パトロン制度が過去のものとなったのと同じように、音楽産業の他の側面も新たなメディア環境に移行し、その重要性を失ってきました。『音楽を家に持ち帰り繰り返し聞くために、お金と交換で手に入れる』という考えは、急速に時代遅れとなりつつあります。

 消費者個人に対して、ある種の物質的な形態で録音物を販売したいというのは、私たちが常々望んでしまうことではありますが、もうそれは絵に描いた餅なのです。
 つまり、『モノ』を売るのはもはや音楽からお金を儲けるための主要な手段ではなくなってきているのです。

 そうした視点に立つと、たとえ現在大成功しているiTunes Music Storeといえども、完全に古臭いものだと言えるでしょう。
 新たなビジネスモデルは、熱心なファンコミュニティとの継続した経済関係の構築にあります。それは、『注目』と『反復的な関わり』でもあります。
 個別の契約や海賊版ダウンロードによる『失われたセールス』という考えを捨て去るということです。CDやMP3は、それそのものが音楽エクスペリエンスの機会になるというよりは、音楽エクスペリエンスとの関わりの『記念品』的な価値をますます強めていくことでしょう。
 
支配的なパラダイムであれ

これまでにMySpace、Facebook、Mog、Last.FM、iLike、Twitter、Skype、Second Life、Tumblr、Vox、Blogger、Live Messenger、Yahoo! Groups、Flickr、Google Reader、Bloglinesを使ったことのある人たちは、嬉々としてあなたに言うでしょう。

「『それ』は会話をすることなんだ」
「『それ』は繋がることなんだ」
「『それ』は関係を持つことなんだ」

 『それ』はトップダウン型の、1対多数の供給モデルではありません。街でたまたま見かけた製品にお金を支払ってくれる消費者でもありません。信頼関係、お勧めしあうこと、そして評判を築くこと、そして、多対多の対話です。
 お金は注目が集まる先に流れていくのです。
 
 
  という風に、私家訳したあと、オリジナルの著者アンドリュー・ダバーさんの意識と、現代の最先端たる『オンラインの音楽ビジネス』とて、いずれは何か別のものに王座を譲らねばならない無常を感じました。
 著者のアンドリューさんは、原稿のなかで何度も『ゲーム』とか『プレイヤー』、『スコア』『レート』といった用語を用いています。まるで、対戦ゲームや、大人数参加型オンラインゲームの話をしているかのようです。
 そして、それは現実のある側面を見事に言い表す、すばらしい表現手法だと思いました。
 どのオンラインゲームよりも面白く、参加人数は約60億と大規模、出会いに富んでいて、マシンスペックに依拠しない、参加条件は平等、チート不可能で、現実貨幣が得られるゲームといえば『現実』なのです。
 参加条件は『生まれる』ことだけ、辞める条件は『死ぬ』ことです。
 サーバーダウンも巻き戻しもリセットもありませんから、快適に24時間プレイ可能ですよ。
 この世でもっとも意のままに鍛えられるキャラクター、それは自分自身なのです。
 ただし、ゲームのルールや戦略を研究せず、またキャラクターたる自分自身の能力や技能を鑑みずに、闇雲にプレイしても良い成果は望めません。攻略方法は沢山ありますが、自分にあった攻略方法を取捨選択しないと、キャラクターたる自分自身を損なってしまいます。
 音楽ビジネスに限った話でなく、全人類にとって『現実の一側面』をよく表した考え方だと思うのは、こういうわけでございます。
 もっとも、安易な『ゲームの理論』で現実の多彩な側面を切り捨て、自分に都合のいい部分だけを信じようとするのは危険なことです。包括的に考えねば、短絡思考のそしりは免れえません。
 ここでいう「包括的」とは、『ゲームの基本ルール』を切り捨てないことです。
 『基本ルール』、それは、『プレイヤーは誠実に自己の夢の実現を希求し、他者の自由を侵害しないこと』です。また、私にとって『プレイヤー』は人類だけでなく、全ての生命体を含めた概念であることも申し上げておきましょう。
「人類は恒久平和を達成し、互いに調和しながら繁栄する英知を実現した!しかし、他の生物は全て滅びたようだ!」
 では困るのですよ。マジ困ります。
 同じことは創作活動全般においても当てはまります。
「『VOCALOID』使用音楽は大人気、業界を震撼させた!しかし、それ以外の音楽全般は滅亡し、記録上にしか存在しない!」
 とか、
「音楽ビジネスは新たな金銭獲得モデルを構築し、個人単位のアーティストたちは新たな成功を享受するようになった!しかし、アナログ創作物は絶滅した!」
 というのは困るのですよ。
 
 『ゲームのように現実を見て、分析する視点』は面白くためになります。同時に、忘れてはならないことがあります。
 それは、「現時点の勝利は一時的なものでしかなく、ゲームの盤面に新たな技術が現れた場合、その技術は盤面を変更し、プレイヤーの勝率や攻略法を変更する」というものです。
 現代の最先端たる『オンラインの音楽ビジネス』とて、いずれは何か別のものや方法論に王座を譲らねばならないのです。
 また、オンラインコンテンツに触れない人々は、今この地球上に何億人もいます。彼らの消費傾向を忘れて、小さなパイに過ぎない『オンラインビジネス』でのシェア奪い合いに興じてばかりいると、超大規模MMORPG『現実』の中では極めて小さな成果しかあげられない。
 いずれは隅っこに追いやられ、忘れられるプレイヤーになってしまうことでしょう。オンラインに取って代わる情報流通技術が、今後現れたらどうなさるおつもり?というヤツです。

「『モノ』を売るのはもはや音楽からお金を儲けるための主要な手段ではなくなってきているのです。」
 という一文からも、現在のコンテンツ産業のお金の儲け方を伺い知る事が出来ます。
 着うたや着メロは『物質界の構成素材』を必要としないコンテンツ商品です。
 また、クリプトン・フューチャー・メディア社の開始したオンライン専門音楽配信代行サービス、『RouteR』は、この流れが個人単位、サークル単位の動きにも波及していることを示しています。
 同様のアグリゲーターサービスは他にも沢山あります。
 が、
・完全に日本語でやり取りができる
・24時間受付してくれる
・オンラインだけで全ての作業が完了する
・取り分や契約内容が明示されており、会員にならなくてもそれが分かる
 この4点全てを兼ね備えたサービスはこれまでにありませんでした。
 部分的になら、これまでのサービスにもありました。
・良くある質問ページや一般的に使用するメニューなら、日本語化されている。つまり、突っ込んだ話やチョット特殊な話はことごとく英語でメールしないといけない。大半の日本人にとっては、ちょー面倒くさい。
 とか、
・一度はCDを送りつけないといけない。つまりシフト制交代勤務の社会人や、近所に郵便局のない人はこの時点で切り捨てられている。
 とか、
・会員になったら(つまり貴様の個人情報と会費をよこせば)取り分や契約内容を教えてやる。実は会員になっても教えてくれないところが大半である。
 といったサービスばかりだったのです。
 個人単位、サークル単位の動きに、きめ細やかな対応ができるサービスこそ、インターネット時代のオンラインビジネスにおいて、成功する必要条件です。最低限ライン、と申し上げてもよいでしょう。
「まず会員になって、貴様の個人情報をよこせ」
 というサイトは、幾ら無料でテンプレートやらなにやら有用なものを提供していても、早晩衰退することでしょう。
 消費者はとにかく、『手軽に欲しいものを手に入れたい、スパムに悩まされたくない』からです。
 「どんなにお手軽とうたったところで、結局手間をとらせる」ことを指して、『個人情報の入力が面倒』というのです。「個人情報を登録しなくても、気前よく配布してくれる無料サイト」があれば、注目とお金はみなそちらに流れていくことでしょう。

 もっとも、日本のVOCALOID界隈に限定したお話で申せば、人々は『物質界の構成素材』不要なコンテンツを購入している一方で、『モノ』に執着する傾向も共に示しています。私は『ぜんぜん』と言えるほどモノに執着しておりませんが、ファンといいうるほど熱心な人は、『お布施』と称して気前よく買い込みます。
 この流れも、
『作者への還元、素敵だと感じたコンテンツにこそ、小額でも支払う枠組み』
 や『共通の意識』が出来て、広まれば広まるだけ、変化する可能性があります。まさにマクルーハンの古典的メディアの法則です。
 PayPalやAmazonギフトコードは、個人やサークル単位の経済的活動を活性化させる力を秘めています。
「一円たりといえども、お金を儲ける日曜アーティストは許せない!!1!!!」
 とヒステリックに騒ぐ人は、長期的視点で言いますと自らの文化を攻撃しているのです。
 たとえば私の一ヶ月の月収は14万3999円ですが、手取りは11万2540円です。そこから消費税分の5%に相当する『5627円』を、同人活動で手に入れられるでしょうか?
 答えはノー、です。まず私は、金銭を対価に得るべく『物質界の構成素材』を持ったコンテンツを世に送り出していません。
 また、PayPalやAmazonギフトコードを「Donate(寄付)」するための仕組みも、サイトに用意しておりません。
 それでも仮に、PayPalやAmazonギフトコードを「Donate(寄付)」するための仕組みを用意すれば、誰か熱心なファンがお金を押し付けてくれるでしょうか?
 自分の能力や、サイトのアクセスログを勘案しますと、あまり楽天的にはなれませんね。つまり答えはノー、なのです。
 もっとも悲観的になっているわけではございません。
 いずれ実験的に、『物質界の構成素材』を持たないデジタルコンテンツのみで『ドネーションウェア』として画集を出してみようか?と計画しています。
 こうした小論文を読むことで、計画の練り直しをより現実的なものにできました。
 次の『まとめ』の節も興味深く拝読してまいりたいものです。
 完全に、全部の英語ニュアンスを正確に、違和感ない日本語に翻訳することは困難です。(だからこそ、プロ翻訳者は凄いものですし、お金がもらえる職業なのです)
 ココではあくまで、私の理解できた意味をご紹介してまいりたいものです。
 ゆるりとお楽しみくださいませ。
 人生の楽しみは尽きませんのぅ!はっはっはっはっ。

参考リンク先にて無料のPDFファイルを配布中。

著者: Andrew Dubber 原文英語 他
原典:The 20 things you MUST know about music online
http://www.newmusicstrategies.com/ebook/

そのほかの日本語訳 heatwaveさんのブログ
http://peer2peer.blog79.fc2.com/blog-entry-1427.html
http://peer2peer.blog79.fc2.com/blog-entry-1624.html
 
posted by 切身魚(Kirimisakana) at 13:47| Comment(0) | 20のこと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『19 口コミで行こう』

 こんにちは、猫耳DMことVOCALOIDな界隈では切身魚の人です。
 Andrew Dubber氏の無料e-booksで配布されている著書、『オンライン音楽について知っておきたい20のこと』(原題"The 20 Things You Must Know About Music Online"
)は大変知的に刺激を受ける良い論文です。
 20個ほどの、優先順位はないのですが、いずれも重要な『オンラインでの音楽ビジネスについて、知っておけ!』なお話が収められています。
 私が今日読んでみたのは『19 口コミで行こう(Make it viral)』です。本当に読みながら「うんうん」と首肯することしきりでした。
 実用新書のように論理的な日本語訳はheatwaveさんのブログでご覧いただけます。より理解を深めたい方はぜひご覧下さい。
http://peer2peer.blog79.fc2.com/blog-entry-1427.html
http://peer2peer.blog79.fc2.com/blog-entry-1624.html
 ここでは私の意訳や注釈を交えた引用つきで、その内容を少しご紹介いたしますね。以下の()内は私の注釈です。


 これまで私たちは、インターネット上の活動を通して、あなたのカスタマーをウェブサイトに呼び込み、繰り返し訪問させ、いわゆる『金銭的関係』を構築する方法についていろいろ考えてきました。さて次のステップは、カスタマーたちに友人を連れてきてもらうことです。例えば……

To: これまでにお会いした皆様へ
From: アンドリュー・ダバー
Date: 14 May 2007

Subject: FWD: これ聞いてみて!

以前、私はここNew Music Strategiesで、Sneaksというバンドのクレバーでキュートなミュージックビデオを紹介しました。政府の公的資金を持って競馬場に行き、それを一頭の馬に掛けるというビデオクリップでしたが、これは面白い、驚くべきアイディアですし、最終的に広く話題になりました。

 ……というメールです。
 私がいつも読んでいるウェブサイトで上記のビデオを見つけて、ここNew Music Strategiesで紹介したのですが、記事を読んだ人たちも、彼らの友達にこのビデオを教えていました。

 このブログを読んでいる『誰かの知り合いの、そのまた知り合いの、オーストラリアの誰か』から、私宛にこのYouTubeのリンクが送付されるまでに、それほど時間はかかりませんでした。
 彼らは筆者が「このビデオを見たことがあるか?」を聞きたがっていました。彼らは、きっと私ならおもしろがってくれるだろう、と考えたようです。さらに彼らは『Check this out(要チェック)』というフレーズをメールの件名に入れていました。

 こうして、The Sneaksのビデオはバイラルに、すなわち『口コミで有名に』なりました。

 Nizlopi(切身魚注:バンド名です)はバイラルではないのかもしれませんが、しかしそれでもバイラルなのです。これには少し説明が必要かもしれませんね。

 つまり、誰かがBoing Boing(切身魚注:有名ブログ)やNeatorama(切身魚注:有名ブログ)でこのビデオの存在を伝えれば、それらの有名ブログがロケットとなりうるのです(有名ブログのジェット推進力が、本当に強力なバイラル効果を生み出す方法だとしたら、ですが)。

 個人的には、(筆者サイトも含めた)有名blogのバイラル効果が、強力なものとなるよう期待しています。
 
効果的なマーケティング

 オンラインでの成功には『効果的なマーケティング』が重要であることは、疑いの余地もありません。今の私たちの目的に好都合なことに、効果的なマーケティングはインターネットとの関わりによって、何倍にも効果を広げられるのです。
 摩擦係数(切身魚注:複製コストや、数量の限界、人的な趣味の相違という意味で、情報伝達を遅くする要因のこと)の小さい環境での口コミ広告は、100人の人にストーリーを伝えるのも、1人の人にストーリーを伝えるのも同じくらい簡単にできます。
 また、フライヤーの配布を考えてみても、ご同様です。あなたがギグのフライヤーを渡したすべての人が、全く同じフライヤーを、そのまた1ダースの友達に配れてしまうのです。
 こうして配られた『友達』も、さらに同じように『友達の友達に配布』できるのです。
 これぞデジタルメディアの『完全かつ終わりなき複製』のなせる技です。

 ただし!
 マーケティングは正しく、法律と常識にのっとって行わなければなりません。マーケティングのルールはオンラインでも決して変わることはありません。

 即ち、他の人にも伝えたくなるような良いストーリーを提供する、ということにつきるのです。先にあげたNizlopiやSneaksのバイラルマーケティング(切身魚注:口コミ効果で有名になり、お金儲けすること)の例でもおわかりのように、この場合の『ストーリー』はビデオという形をとることもできます。
 ですが、テキストやオーディオでも同じように容易に行うことができます(むしろ、より簡単にできることかもしれません)。

 多くの事例ががありますが、ここでは、初めて『バイラルマーケティング』に触れる方のために、オーディオ、テキストについて概説することにしましょう。

オーディオ

 Lascivious Biddies(切身魚注:NYのバンド名)は、ポッドキャストを非常にうまく活用しました。彼らはリハーサル、ライブツアー、バックステージでの出来事や、さらにライブパフォーマンスそのものやライブでのトークの一部をポッドキャストで配信し、視聴者を舞台裏に招待したのです。
 彼らの『ポッドキャスト』それ自体がヒットしたのは事実です。が、『ポッドキャストを通じて成功』したのは、インターネットでの口コミ現象が引き起こした『結果』でもあります。
 他のポッドキャスターたちは皆、Lascivious Biddiesのポッドキャストについて話しました。
 こうして次々でてくるポッドキャスト番組を聞くということは、Lascivious Biddiesの右肩上がりの成功曲線を聞くということを意味するのです。

テキスト

 ブロガーは、彼ら自ら最高のコンテンツを作り出してくれます。それ自体が有益で魅力的な記事なのですが、さらにブロガーは他のコンテンツにリンクを貼りあうのも好きなようです。
 私もしばしば、CopybloggerのCopywriting 101という記事に参照リンクを張っています。(切身魚注:Copybloggerはコピーライティングやコンテンツ産業のマーケティングに関するアドバイスを集めたblogです。Copywriting 101はその中の1コンテンツで、いいキャッチコピーやタイトルを書くための秘訣を教えています。http://www.copyblogger.com/

 良いマーケティングのための秘訣はありますが、良いマーケティング『そのもの』は何の秘密もありません。
 最も簡潔に秘訣を言い表すと、「適切なメッセージを、適切な人たちに、適切な手段を用いて、適切なタイミングで送ること」です。

 しかし、これを突き詰めていくと、以前にもお話ししましたが、ここに行き着きます。
「あなたのウェブサイトそのものは、プロモーション戦略とはなり得ない」
 あなたのウェブサイトの『ための』プロモーション戦略を必要とするのです。

 魅力的な記事を提供しましょう。
 ユニークな販売手法を見つけましょう。
 あなたがしていることは、何が他の人たちと違っていて、珍しくて、スペシャルで、注目に値することなのでしょうか?

 たとえば、あなたのバンドのサウンドが
「グリーンデイっぽくてクールだ」
 と伝えたとしても、それは『あなた独自の売り(切身魚注:原文ではUSP、Unique Selling proposition のこと。)』にはなりません。『グリーンデイっぽい』ことは、あなたのターゲットにしている層にとってはプラスに働く『かもしれません』が、それとは別の『語られるべきストーリー』があるはずです。

 すなわち他のバンド、企業、製品、サービスとの『違い』こそ、あなたがここで『語るべきストーリー』なのです。さらに、それを見た人たちが、他の人にも伝えたくなるような『ストーリー』を、そこに書かねばなりません。
 あなたのストーリーを他の人々に伝えてもらうための戦略、更に言えば、伝えられた人がまた誰かに伝えたくなるような戦略を見つけましょう。
 
筆者自身が行っていること

 筆者が今試している戦略は、まさに今あなたが読んでいるもの、そう、この電子ブックです。

 PDFファイルであれば、ウェブサイトからのダウンロードも、メールへの添付も、プリントアウトも、参考用に保存しておくことも簡単にできます。

 もし、あなたがこのThe 20 Thingを気に入ってくれたら、興味を持ってくれそうなお友達に、PDFのURLをメールで送れますし、このPDFファイルそのものをメールに添付してアドレス帳にある人全員に送ってくださっても構いません(もちろん、そうしたいと思えば、ですけれども!)

 さらに大事なのは、私は『バイラル効果』を助けるために、もう2,3の追加Tipsを使っています。

 まず、PDFファイルの入手を面倒くさくしないこと。
 ウェブサイトを訪問し、PDFを欲しいと思ったなら、私はそれをあなたに送信します。自由で、無料で、それでいてあなたを縛るものではありません。

 一度入手したら、このThe 20 Thingはいつでもあなた自身のウェブサイトに掲載してもらって構いません(あなたがそうしたいと思えば、ですが)。何の問題もありません。

 印刷したり、フォントを変えたり、たくさんの写真を加えたり、装丁を変えたり、全ページにあなたのロゴを加えたりしたものを提供しても構いません(そう、あなたが渡したいと思う人、誰にでも提供できます)。
 もっと言えば、オーディオブック版を作ってもらっても構いませんし、音楽を加えたり、創作ダンスのルーチンで使ってもらっても構いません(もちろん、あなたがそうしたいと思えば)。お好きなようにしてください。

 私があなたにお願いするのはたった2つのことです。

1) 私が書いたものであることを明記する

2) New Music Strategiesへのリンクを入れる

 たったこれだけです。

 たったこれだけのことが、私にとって意味のあることなのでしょうか?
 そう、その2つこそ有益なものなのです。

 もし、これを出版したい、商用利用したいとお考えでしたら、話し合いを経て、お互いに良い結果を出すこともできます。
 しかし、単に「読みたいだけ」とか、「自分たちの音楽ビジネス(実際には小・中規模ビジネスの方がほとんどでしょうが)が時流に乗っているのかを確認するため、参考にしたい」、と考える大多数の皆さんにとっては、これは私からの贈り物です。

 有益だと思ってくれれば嬉しいですね。

Check This Out(これをチェックしてみて)

 あなたが何をするにしても、他の人に送りたい、伝えたい、と思わせるよう心がけましょう。あなたの最高のマーケティングは口コミであり、それはオンラインだからこそ、爆発的に強力なのです。

 あなたが何をしていようと、誰かに
「『Check this out!』という件名でメールを送ってもらうためにはどうしたらよいのか」
 を考えましょう。うまくいけば、1週間後、『FWD: FWD: FWD: FWD: Check this out!』というタイトルのメールが、めぐりめぐってあなたの元に届くかもしれませんよ。


 という風に、私家訳したあと、 口コミの強力さを感じました。
 強力だからこそ、上手くやらねば身の破滅であることも痛感しました。

 閉じたコミュニケーションのSNSであれ、開放されたコミュニケーションのTwitterであれ、私たちは『自分の見つけた、何か目新しくて面白いもの』を『友達に教えて回りたい』欲求を持っています。
 コラムにありました通り、
「適切なメッセージを、適切な人たちに、適切な手段を用いて、適切なタイミングで送ること」
 を実行すれば、それはバイラル効果のプラスの側面を遺憾なく発揮してくれます。
 しかし、上手くやらねば身の破滅。
・不適切なメッセージを
・不適切な人たちに
・不適切な手段を用いて
・不適切なタイミングで送る
 と、あっと言う間に袋叩きやネガティブキャンペーンの犠牲にされます。
 運が良くても、『まるっと無視され』て、『いつもつまらない事しか発信しない連中』の一員とみなされ、二度と注目されない存在、『無視リスト』行きに成り下がるだけでしょう。

 では、・不適切なメッセージとはどのようなものでしょうか。
 これはTPOに依拠するところが大きい、デリケートな問題です。
 たとえば、音楽好きの集まる界隈で、Aと言う曲が大変面白く、まだ誰も注目していない頃なら、あなたがメッセージとして発信するのは『適切』『歓迎される』ことです。
 ところが、別に音楽が好きとは分かってない人達の間で、しかも誰も彼もがあちこちで発言し、一回くらいは視聴した後ならどうでしょうか?『不適切』とまではいかないにせよ、『はいはい、もう知ってるよ』と受け取られて終わりなのです。
 もちろん、倫理学的に不適切なメッセージも沢山あります。あるいは単に、集団の趣味からはずれすぎている、ということもありうるでしょう。
 私たちはできる限り、他人の趣味にけちをつけたり、ヘイトスピーチを行う事は避けるべきですが、『それらを誘発するような』メッセージ発信も回避するに越したことはありません。
 それには、まずTPOを吟味し、『今、この場で、この情報を発信すべきなのかどうか』を考えるべきです。
 それから、『それでもこの情報を発信すべき』となったなら、ユーモアと風刺のスパイスが効いていたり、技巧の優れたパッケージが重要な役割を果たします。
 実はとんでもなく『ママに怒られそうな』内容であっても、一見しただけではそれと分からないもの。
 教養豊かで大人びた連中ならそれと気付いてニヤリとするようなもの。
 優れた技術に支えられているため、『ガキの火遊び』と一蹴しようにも出来ない『大人の知的遊戯』、「叩いた側が見識を疑われる」クオリティの情報。
 安易な感情論をたやすくあしらい、深い見識と正当な理論で反駁できる強靭なプロデュース。
 アーティストはそうしたものを提供することで、人々の『趣味』に貢献し、自らを守る必要があります。簡単に情報発信できるからといって、粗製濫造していては、結局のところ「つまらない、毛の生えた素人」の一員、あるいは『二度と注目されない存在』、『無視リスト』行き案件に成り下がるだけでしょう。

 また、環境要因も無視できない問題です。
 2010年5月現在のところ、日本の表現の自由はまだ憲法によって保障されておりますが、今後の法改正や都道府県、市町村単位の条例制定によっては大きく制限される恐れが出てまいりました。
 『児童ポルノ撲滅』の美名の下、実際には「大量の退職警官や退職公務員を、楽にできるお仕事の独立行政法人やNGOやNPOで雇って、公費で養わせよう」なんてことがまかり通っては困ります。一日中、エロ出版物やケータイコンテンツ、エロサイトを『審査』して、気に入らないものや袖の下をくれない出版社の創作物は『規制対象』にする簡単なお仕事は、世に必要なものでしょうか?
 本当に世の中に必要とされる「実在の児童・青少年のみならず、あらゆる人への虐待の早期発見、防止」や「出生率低下対策としての、親御さんへのサポートやケア」といった事業に、お金と人員が回らなくなるのではないでしょうか。
 ましてそうした『天下り』のため、世界有数の『低』性犯罪発生率国家ニッポンおいて、『根拠不明な規制』や『言論統制に繋がる法律』を導入することは、あってはならないことです。
 「大量の退職警官や退職公務員を、楽にできるお仕事ではないが、児童や青少年の虐待防止、子育てサポートのための労働を行う独立行政法人やNGOやNPOで雇って、公費で働いてもらおう」というのなら、国民として同意も出来ます。大変であっても世の中に必要な、つまり『適切なお金の使い方』ですからね。
 それですら、「年金もらうまでのつなぎに」という意識で、実務能力のない人を、無選別に雇うわけには参りません。
 国庫のお金は有能な人士を雇って働いてもらうためのお金ですからね。
 
 話がそれましたが、『不適切なメッセージ』ととられないために、TPO吟味のほかにも、できることは沢山あります。たとえば・不適切な人たちに送らない、とかもそうですね。
 興味を持っていない集団に、突然『興味をもて』と『押し付け』たとしても、よい効果は期待出来ません。むしろ反発や排斥といった、『よくない効果』をまねきます。
 私などはできる限り、『興味ないものを押し付けないで』と言いたくありませんので、そういう辞退に遭遇せずに済むよう、捨てアドは必ず『マーケティングに協力しない』で済むように設定して取得しておりますw
 このパーミッションマーケティング全盛の時代に、ポスティングやスパムメールで儲かると思う時代錯誤な業者は、早めに事業規模を縮小していただきたいですからね。
 ・不適切な手段を用いて、も関連するお話。特にスパムメールやスパムコメントは大変に嫌がられます。
 例え『良い』目的意識に基づいた行為であっても、『手段』や『行動』がルール違反なら叩かれますし、場合によっては法廷で裁かれることになります。
 たとえば、『シー・シェパード』の捕鯨反対活動家などが良い例でしょう。訴えていることは『捕鯨反対』という、特に欧米の人には支持されそうな内容であっても、『手段』は「他国の漁船に押し入って、一般人の船員に催涙弾を投げつける」という不法行為です。
 『使命に目覚める自由』は万民に保証されますが、使命のために『他者の安全と自由』を侵害してよい、ということにはならないのです。安易なマキャベリかぶれさんが言うように「目的は手段を正当化する」ことは『ない』のですよ。
 小国同士が争っていたルネサンス期イタリアの思想家、ニッコロ・マキャベリの『君主論』では、「国家危急の際には、君主たるもの、非道徳的手段といえども有効ならば用いるべし」という意味で、「目的は手段を正当化する」とありました。
 逆に申せば、目先の利益にばかり注目して、小国同士の争いで疲弊したら、他の大国に個別撃破で侵略され、小国家どころか民族全体が存亡の危機に晒される。そんな『非常事態』でもないかぎり、「目的は手段を云々」という事は俎上に載せてはならないのです。
 国民全員の同意が得られるわけでもない、緊急性も必然性も無い議題において、「目的は手段を云々」などと論じようとすることは、知的退行とそしられても仕方の無いことでしょうね。
 また、いくら技術的に可能だからといって、検閲として使用可能な『DPI技術』による広告マーケティングを法律でも可能にしよう、などという動きは容認できるものではありません。『(性犯罪発生率が日本よりはるかに高い)先進国』では『児童ポルノ単純所持規制』が行われているというのなら、その『先進国のことごとくが、違法違憲として採用を許可していないDPI技術』を日本でやるなんて、とんでもない提案です。認めるわけにはいきません。
 違法技術を用いてマーケティングしないと生き残れないような経済活動ならば、規模を縮小するべきです。できるだけ小さく、そう、誰にも存在が認識できないほど小さくなれば、なおよろしゅうございますな。
 そんな違法技術を用いなくても、「適切なマーケティング」を遂行できる個人や、小規模集団でも、いい稼ぎを手にできる世の中であるべきです。ジョン・ロールズ的自由主義経済とは、『門戸や生地、性別、思想信条、人種に関わらず、倫理的に適切なビジネス活動を行う者が、しかるべき報酬を手にする』ものですからね。

 このように、『19 口コミで行こう』記事は、
「現代日本の表現者達が置かれた危機的状況(根っこには退職公務員達の雇用への要請)、適切な口コミのありよう、経済的要請を隠れ蓑にした違法技術推進の危機」
 への考察をより深めてくれました。
 次の第20節も興味深く拝読してまいりたいものです。
 完全に、全部の英語ニュアンスを正確に、違和感ない日本語に翻訳することは困難です。(だからこそ、プロ翻訳者は凄いものですし、お金がもらえる職業なのです)
 ココではあくまで、私の理解できた意味をご紹介してまいりたいものです。
 ゆるりとお楽しみくださいませ。
 人生の楽しみは尽きませんのぅ!はっはっはっはっ。

参考リンク先にて無料のPDFファイルを配布中。

著者: Andrew Dubber 原文英語 他
原典:The 20 things you MUST know about music online
http://www.newmusicstrategies.com/ebook/

そのほかの日本語訳 heatwaveさんのブログ
http://peer2peer.blog79.fc2.com/blog-entry-1427.html
http://peer2peer.blog79.fc2.com/blog-entry-1624.html
 
posted by 切身魚(Kirimisakana) at 13:06| Comment(0) | 20のこと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年05月19日

『18 頻繁さが全て』

 こんにちは、猫耳DMことVOCALOIDな界隈では切身魚の人です。
 Andrew Dubber氏の無料e-booksで配布されている著書、『オンライン音楽について知っておきたい20のこと』(原題"The 20 Things You Must Know About Music Online"
)は大変知的に刺激を受ける良い論文です。
 20個ほどの、優先順位はないのですが、いずれも重要な『オンラインでの音楽ビジネスについて、知っておけ!』なお話が収められています。
 私が今日読んでみたのは『18 頻繁さが全て』です。本当に読みながら「うんうん」と首肯することしきりでした。
 正確で、実用新書のように論理的な日本語訳はheatwaveさんのブログでご覧いただけます。より理解を深めたい方はぜひご覧下さい。
http://peer2peer.blog79.fc2.com/blog-entry-1427.html
http://peer2peer.blog79.fc2.com/blog-entry-1624.html
 ここでは私の意訳を交えた引用つきで、その内容を少しご紹介いたしますね。以下の()内は私の注釈です。

 ウェブサイトを訪問してもらうだけでは不十分です。訪問者には『再度』訪問してもらわないといけません。彼らが『再度』訪問してくれる理由はただ一つ。
 「サイトを覗く度になにか新しいものがある」ということ。

 優れたコンテンツのある、見栄えの良いウェブサイトを作ることも大切でしょう。
 ですがそれよりもっと重要なのは、定期的に変化するコンテンツを用意することなのです。RSSフィードの価値や、人々を購読者としてあなたに惹きつけておくことの重要性は、これまでに語った通りです。
 
 ところで、『RSS未登録』で『いつも訪問する』人ではない人々、『たまに訪問する』程度の人はどうでしょう。そうした『たまに来る人』でも、来る度に新しい情報が詰まった『記事』や『見るべきもの』たくさんあれば、あなたのウェブサイトを魅力的だと思ってくれるでしょう。
 そうしてちょくちょく見てくれるようになれば…、もしかしたら彼らはクレジットカードをご利用になるかもしれません。(切身魚注:つまり、あなたの音楽やコンテンツを買ってくれるかもよ?という事です。)

 毎日のように更新しているサイトが『アクティブで、新鮮で、活気がある』ウェブサイトだと思われる一方で、放置されたウェブサイトや利用されていないフォーラムは、元気がなく放棄されたように見られてしまいます。
 ここでは、あなたのウェブサイトをフレッシュで、常に最新のものにし続けるためのヒントをご紹介しましょう。
 
1. コンテンツ・マネジメント・システムを使う

 あなたのウェブサイトは修正が簡単ですか?何かを変更したり、コンサートの日時を追加するたびに、ウェブデザイナーの助けを必要とはしていませんか?

 最近では、あなたの既存のウェブサイトに統合したり、(残念ながら若干古くさくなってきた)あなたの今のサイトを、一括処理で置き換えたりできる優れたコンテンツ・マネジメント・システム即ち『CMS』パッケージがあります。
 CMSを利用すれば、ウェブ技術のスキルなどなくても、朝でも昼でも、あなたのウェブサイトをいとも簡単に、あっという間に更新できます。レイアウトやデザイン全般に至るまで、あなたの代わりにやってくれるのです。ウェブ・デザイナーに電子メールを送るよりも簡単でしょう?

 一部のコンテンツ・マネジメント・システムは無料で提供されています。このサイトではWordpressを利用していますため、私はWordPressを一番にお勧めします。他のCMSだとJoomlaも悪くはないかもしれません。たくさんのアクセサリーやプラグインが欲しいのなら(私は必要としてはいませんが)、特にお勧めです。

 もし、あなたにウェブ・デベロッパー(ウェブ宣伝担当)がついているのなら、CMSが欲しいと伝えてみましょう。主張しましょう。必要があれば、「CMSが無料で手に入ることも知っている」とさえ、言うのです。
 
2. 話すことはあらかじめ用意しておく

 何か思いついたことをそのまま投稿するのは止めましょう。
 話すことは前もって考えておくべきです。
 そりゃあ、「あなたがしていること」についてでも構わないのですが、それ以外でも、「私がこのブランドのギターの弦を好きな理由」とか「君の知らない当レーベルアーティストのヒミツ」、「あなたのCDを封筒に入れてくれているバイトの子へのインタビュー」などでもよいでしょう。
 
3. 他所からコンテンツを引っ張ってくる

 既存のコンテンツを利用することは悪いことではありません。もちろん、きちんとルールにのっとっていることが前提です。
 それは、単にコピー&ペーストすることではありません。
 学問の世界で自然に行われているように、他の誰かが話した有益な言葉を、文脈に当てはめて用いたり、説明したり、コメントするという形であなたのウェブサイトに持ち込むことをお勧めします。
 正直なところ、あなたが関わる音楽産業の問題点を指摘している人は既にたくさんいます。往々にして一番大変な仕事(切身魚注:業界の問題点を鋭く指摘すること)は、そうした人たちがやってくれていたりもするんですよね。

 私がこんなことを言ってたなんて内緒ですよ?

4. 時事ネタについて語る

 時事ネタを使って、それをあなたに絡めて話してみましょう。他所からコンテンツを引っ張ってくるのと同じように、 他の出来事を出発点にして、あなたの視聴者にとって価値あることを、そこに付け加えるのです。
 
5. オンラインで補足してオンラインで投稿する

 ギグをする、プロモーションをする、プレスリリースを出す、アルバムを1,000枚売り出す、おもしろい原石を見つけた(切身魚注:おそらく原石のような新人と言う意味でしょう。)、などなど、どんなことでも、写真を撮り、文章を書き、それをインターネットに載せましょう。EPを出す、コンサートをやるといったことだけでなく、あなたに関連する『すべてのこと』を。

 頻繁さ、頻度には不思議な効果があります。
 頻度の高さは、あなたがプロフェッショナルで、忙しく、人気者であるかのように思わせてくれるのです。
 たとえば、「イヤッホオォオォォォオウ!ついにアルバムがリリースされたー!」と投稿したのを最後に、その後1年にわたってそのメッセージがトップに残り続けたら、どう思われるでしょうね?
 きっと、
「あの投稿を最後に、今までの一年間は何も特筆できるようなイベントはなかったんだな・・・」
 と推測されるでしょうし、『何もなかった』ということはあなたに価値がないように思わせてしまいます。

 人は、「いま」起こっているものに時間やお金を費やしたいと思うものです。人が注目してくれない、あなたを見過ごしてしまうとなれば、
「あなたは視聴者にとって、追いかけ続けるほどの価値はなかった」
 ということを意味するのです。

 『金銭的な関わり』とは、パーセプション・マネジメント(認識管理)の成果なのです。認識してもらい、認識しつづけてもらいましょう。
 
 
 という風に、私家訳したあと、「ナウい感じ」の大事なことを痛感いたしました。あるいは、「俺達はエッジな場所で遊んでいる」という感覚とも申せましょうか。
 どんな人だって、ご自分の参加しているムーブメントや共同体、コミュニティの活動が『最先端』で、『時代という船の舳先』であると思うと、誇らしい気分になるものです。
 まして「ムーブメントに貢献している私」を実感するとなればもう、超格好イイじゃありませんか。大変クールです。達成感が得られます。
 それを私のように「人類の文化的多様性と歴史に貢献する小さな追加」とみなす人もいれば、「オイラってちょっとイケてる」とみなす人、認識方法は人それぞれです。共通するのは、これが『既存の他の場所や、他の文脈では得られない快感』だということです。
『ネットで、共通の趣味(音楽やイラスト、その複合体であるコラボや動画つくりなど)でしか得られない快感』
でもあるのです。
 
 他の文脈、例えばそれは職業上の生活、学業での成果や地域コミュニティでの活動を指します。
 個人の多様性が注目され始めたのが20世紀末のこと。注目された、ということが、即ち『個人的に価値を置く活動』の変化を社会が承認するようになったかどうか、は意味しません。21世紀になった今日でもそうです。
 例えば、一日の時間は24時間で、一般的な社会人にとって休日の日数は月にせいぜい8−10日です。
 それらを全部、『自分の支援する活動につぎ込みたい』と主張したくても、
『優先順位の低い自治会活動にもことごとく参加すべき(しかも活動の準備参加と、活動後の酒食提供も行うべし。お前が飲み食いしなくても出せ)』とか
『PTA活動に参加すべき(しかもメールや電話で済む話ですらことごとく夜間外出して対面で話し合いを設けるべき、とか、素人の発行する広報誌の、気にするレベルですらない細部まで、事細かに話し合いで決めるべきとか)』
 といった、社会の既存要求はなかなか変化しません。なんと魅力のない場所、嫌悪感を抱く文脈でしょうか。
 ありのままの『現状』というのは、
「若い人は自治会活動やPTA活動に興味がなくなった」
 のではないのです。
「現在の地域社会は、若い人や社会人の生活形態に合致した活動が出来ておらず、また多様な価値観の持ち主達に合意を得られるような金銭的・労働力的負担ではないやり方を継承して、それを自己検証もなしに強要している」
 だけなのです。
 例えば酒を一滴も飲まず、受動喫煙も大の苦手、必要な活動を短時間で効率よく行って、浮いた余暇は自分の個人的活動、特にネットでの活動に使いたい、という個人にとって、
『避難訓練に朝から出てきて、実際の訓練開始の10時までぼーっと雑談しながらたむろし、訓練終了後には打ち上げと称した酒盛りをするので各家から酒食を提供し、給仕と酌もするように。無礼な発言を当然のこととして口にする連中や、タバコを吸う連中にも我慢するように』
 と要求されたらどうでしょう?
 「仕事が忙しい」でも「興味ございません」でも、とにかく理由をつけて逃げ出したくなるに違いありません。こうした非効率的でメリットよりデメリットが大きな『地域社会活動』に貢献する優先度は、地球全体及び人類文化への貢献活動より低くならざるを得ないのです。
 同じお金や労力や時間をさしだすのなら、差別意識に基づいた無神経な物言いや非常識な行動を繰り返す人たちのためのお酒やご飯、一緒に過ごさざるをえない拷問時間より、感謝の心を知っている人たちや困っている人に非常食と緊急キット一式をあげるためのお金、労力、時間に使います。少なくとも私はそうです。
 「現在は若い人や社会人の生活形態に合致した活動が出来ておらず、また多様な価値観の持ち主達に合意を得られるような金銭的・労働力的負担ではないやり方を継承して、それを自己検証もなしに強要している」
 という現状を改善せずに、自治会費を支払いつつも活動には一向に興味も意欲ももてない人を指して、
「社会性が低い」
 と批判するのはたやすいことです。
 どのような活動であれ、注目や興味を引き付け、効率的に活動することで活動それ自体を『楽しいもの』、『目的とすべきもの』にできねばなりません。地方の社会から若者どころか老人も流出しているのは、その社会にとどまるべき魅力が無い、という根源的な理由があるのです。そして『魅力』とは、文化的な少数派や、価値観(特にお金と時間)の異なる人にもアピールするものでなくてはなりません。効率性への希求といったことも当然含まれます。
 それら根元的問題を都合よく忘れて、『何々祭りでの無料何々料理』や『何々ターン就活フェア』だのをやったところで、効果は一過性に過ぎないのではないかと危惧しています。
 翻って、そもそも興味を共有している集団での活動は、端緒からして圧倒的に有利なのです。活動それ自体を『楽しいもの』、『目的とすべきもの』としやすいですからね。
 
 また、死んだウェブサイトほど悲惨なものはありません。
 どんなにTweetしていようとも、ウェブサイトに記事が載らなかったらどういう感じを与えるでしょうか。
「Tweetする無駄話はあるけれど、ウェブサイトで特筆し、人々に共有して欲しいと思うようなイベントや話題がない」
 と思われてしまうに違いありません。実際のところ、Twitterをうさんくさそうな目で見る人たちの大半は、次のように感じている、と言っても良いと思います。大別すると、
「Twitterで単発的につぶやく話はあっても、blogやサイトで、何時でも誰にでも公開できる話ではないってことだね」
 とか、
「アーティストがTwitter外部の視聴者を無視するなら、こっちも彼らを無視するまでだ」
 とか、様々です。そしてそんな反応を引き出すということは、音楽ビジネスだけにとどまらず、オンラインビジネスという場においては、業績に良くない影響があることでしょう。
 
 現に私も、あるペイントソフト(TVPaint)の購入を一週間ほど検討して、結局見送ったことがございます。約6万円近いお金をかけて外国製ソフトの新しいインターフェースに慣れねばならず、何かトラブルがあった場合の対応は英文で書かないと遅いことが分かった挙句、ソフト導入で作業効率がアップするかははなはだぎもん、ということが理由にあげられますが、他にも理由はございます。
 ソフト会社の公式フォーラムが、日本語圏ユーザーに向けて作成したトピックは、まさに『18 頻繁さが全て』の通り。何ヶ月も前に投稿された記事が一件だけ。
 それ以外、彼らソフト会社は日本語圏ユーザーに注意を向けてもいなければ、日本語化への対応を推進してもいない、という事がよく分かるお話です。
「彼らが私たちを軽視する/無視するなら、私たちも同じ事をしよう。そういう会社の商品やサービスを手に入れても、何もいいこと無さそうだ」
 私はまさにそのように反応しました。
 この一事を全ビジネスに当てはめることは難しいかも知れませんが、自分のビジネスや、『非営利だけど有償』の活動に引き寄せて検討するなら、きっとお役に立つことでしょう。
 ウェブサイトやblogを持つということは、あなたの視聴者とつながりを持ち、維持する、ということです。彼らに疎外感や放置された感じを与えるのは、すごーくマイナスとなることでしょう。
 だから私は、原文にない一文を末尾に付け加えました。
 原文は、"『金銭的な関わり』とは、パーセプション・マネジメント(認識管理)の成果なのです。"で終わっていますが、「認識してもらい、認識しつづけてもらいましょう。」と。
『金銭的な関わり』とは、パーセプション・マネジメント(認識管理)の成果なのです。認識してもらい、認識しつづけてもらいましょう。
 第19節以降も興味深く拝読してまいりたいものです。
 完全に、全部の英語ニュアンスを正確に、違和感ない日本語に翻訳することは困難です。(だからこそ、プロ翻訳者は凄いものですし、お金がもらえる職業なのです)
 ココではあくまで、私の理解できた意味をご紹介してまいりたいものです。
 ゆるりとお楽しみくださいませ。
 人生の楽しみは尽きませんのぅ!はっはっはっはっ。

参考リンク先にて無料のPDFファイルを配布中。

著者: Andrew Dubber 原文英語 他
原典:The 20 things you MUST know about music online
http://www.newmusicstrategies.com/ebook/

もっと正確な日本語訳 heatwaveさんのブログ
http://peer2peer.blog79.fc2.com/blog-entry-1427.html
http://peer2peer.blog79.fc2.com/blog-entry-1624.html
ラベル:20のこと
posted by 切身魚(Kirimisakana) at 14:09| Comment(0) | 20のこと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする